外国税額控除はなぜ二重課税された分全額が控除対象にならないことがあるのか?

注意

筆者は税金の素人です。
この文章は「筆者がこう思った」ということが記述されているにすぎず、日本国の税法やその意図に照らして正しいかどうかは保証できかねます。

事の次第

この春、私は確定申告のときに外国税額控除を申請しました。
国税額控除とは、外国で得た収入に対し、外国と日本とで二重に課税されてしまうのを是正するための控除です。
この制度のことを聞いたとき、私はてっきり外国で得た収入に対してかかった税金が全額戻ってくるものだと思っていました。
しかしいざ確定申告の書類を作ってみると…あれあれ?
なんか、税金で取られた額より控除の額が少ない?


…あれから数ヶ月、私はようやく重い腰を上げて真相の調査に乗り出すことにしました。

控除額の計算式

控除額の計算式は以下のようになっています。

(A)= 所得税額 X(国外所得総額/所得総額) 
(B)= 外国所得税額
控除額 = (A)か(B)のいずれか少ない方

(A)の方が少なかった場合、支払った外国所得税は一部しか控除対象になりません。

(A)の方が少なくなる場合

どんな場合に(A)の方が少なくなるのでしょう?
それを知るために、(A)の式をちょっと展開してみましょう…。

      所得税額 × 国外所得総額
(A) = ------------------------
            所得総額


所得税額を展開。

      所得総額 × 税率 × 国外所得総額
(A) = --------------------------------
                 所得総額

ここでいう「税率」とは、「所得税額 ÷ 所得総額」のこととします。
つまり、基礎控除社会保険料控除を適用する前の所得にかかる税率ということです。


分子と分母を所得総額で割ります。

(A) = 税率 × 国外所得総額

というわけで、(A)は国外所得総額に、あなたの(国内の所得)税率をかけたものということになります。


一応、(B)の式も展開してみます。

(B) = 国外の税率 × 国外所得総額

先ほど展開した(A)の式と併せてみますと、「国内の税率 < 国外の税率」の場合、(A)の方が少なくなります。
つまりざっくり言ってしまえば、税率の低い人≒所得の低い人の場合、(A)の方が少なくなります。
税率が低ければ低いほど(A)は少なくなるので、逆進的な効果*1があります。

国税額控除の意味(妄想)

前節で最終的に展開された(A)の式をみますと、外国税額控除とは「国外所得に対して日本でかけた『所得税』を控除するもの」と言うことができそうです。
株式の配当や投資信託の分配金など、国内の所得税率と関わりなく一定の税率で課税されるもののことは念頭に置いておらず、あくまで控除額は「国内の所得税率 × 国外所得総額」で計算するということのようです。


すっぱり「控除額=国外所得に国内でかかった税額」にしてくれないのはどんな理由があるんでしょうね…。

*1:給与所得に対する課税なら元々累進的に課税しているのだから逆進的ではないが、配当等に対する課税は誰でも税率一律なので逆進的